硬質材/軟質材を積層したサンドウィッチ工具を用いた
超音波微細溝群加工法



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例えば,切削工具(刃先交換チップ)の表面に,微細溝群を創成すると,

 (1) 工具-切りくず接触界面の摩擦特性を制御できる

 (2) 切りくず流出方向を制御できる

 (3) 切削力を安定化できる,特に背分力の変動を低減できる

などの効果があります.

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Workpiece: 0.45% carbon steel, Cutting conditios:V=100 m/min, d=1.0 mm, f=0.25 mm/rev, WET


さらに,工具表面に温度センサーや力センサーの回路パターンに則した微細溝を創成 できれば,その溝群の中に各種センサーを埋め込むことができます. これらセンサーにより,工具-切りくず接触界面の温度分布や応力分布を知ることができ, これらの情報を元にして,摩耗しないように,とか,欠損しないように,とか,さらには, 快削添加物が有効に作用する温度域で加工するなど,加工を最適に制御することができます.

微細溝を工具表面に創成する方法として,レーザ加工,FIB加工,ドライ/ウエットのエッチング法 などがありますが,加工機本体や加工機のランニングコストが高価です.

ところで,溝掘り加工法は,数千年前から行われている加工法です. 太古では,砂など(砥粒)を工作物に静的あるいは衝撃的に 押し付けて溝掘り加工をしていました. 砥粒が工作物表面を引っ掻き,これにより工作物表面を徐々に削り取られるという原理です. 砥粒が工作物に打撃する回数が多ければ,能率が高まるので,現在は,超音波振動を使用しています. これが超音波加工です.

超音波加工では,工作物と超音波ホーンの先端に取り付けた工具の間に,砥粒を混ぜた液体(スラリー)を入れます. 工具は超音波で振動し,そのエネルギーが砥粒に伝わり,砥粒が工作物表面に衝突し, 工作物表面を引っ掻き,徐々に削り取ります. つまり,工具表面の形状に則して,工作物表面は徐々に削り取られます.

これより,工具表面の形状を微細溝群の形状にすれば,超音波加工により工作物表面に微細溝群を創成できます. ここで,工具表面の形状を微細溝群の形状にすると,工具自体の剛性が弱くなるので,超音波加工ができません. そこで,超音波のエネルギーを十分に砥粒に伝播させる薄硬質材と,超音波のエネルギーを吸収し砥粒にエネルギーを 伝えない薄軟質材を層状に張り合わせれば,工具全体の剛性をある程度確保でき,微細溝群を創成できることになります. この工具を,本研究では,サンドウィッチ工具と呼ぶことにします.


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超音波加工用工具, 特許5477784 (平成26年2月21日)
出願:特願2008-0282520,公開:特開2010-105142
発明者:篠塚淳, 出願人:国立大学法人 横浜国立大学

サンドウィッチ工具は,厚さ20~100μmのステンレス製のシムシートを薄硬質材とし,これを エポキシ樹脂製の接着剤で層状に形成したものです.どちらも市販の物を使用できま. シムシートを,要求される溝形状に曲げ加工等により成形し,これをエポキシ樹脂製の接着剤で固めます. シムシートとシムシートの間隔は,エポキシ樹脂にティッシュペーパーを混ぜることで調整できます. サンドウィッチ工具の作成には,それなりの技術が必要ですが,ちょっと慣れれば,良い精度で作成できます.

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現在この方法を利用し,刃先交換チップの表面に微細熱電対群を内蔵する微細溝の創成をおこなっています.

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微細熱電対群内蔵型刃先交換チップで,工具-切りくず接触界面の温度分布を計測できます!

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