切削機構の解析的予測手法と切削性能や工具性能の解析的評価方法

Dr.しのづか じゅん 1991-1998 mail


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yball 切削機構の解析手法
yball 反復収束法による定常切削状態の解析方法
yball 切りくず破断の解析手法
yball 工具摩耗と工具欠損の予測手法
bball 材料の流動応力特性を獲得するためのホップキンソン棒型衝撃試験
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切削機構の解析手法


gball はじめに
切削現象”というものをより詳細に予測するためには, なんといっても材料物性を詳細に把握しなければなりません. 材料物性とは,被削材となる金属材料の応力-ひずみ関係, いわゆる流動応力特性や,比熱や熱伝導率などの熱物性値, さらに工具と被削材(切りくず)の摩擦特性です. これら3つの物性値を詳細に把握することができれば, 数値解析によって詳細に予測することが可能です. 逆にできない場合には,予測精度が極端に落ちます.
なぜなら,切削力は流動応力に大きく依存します. さらに切削力のバランスにより切りくず形状が大きく変化します. 切削力が変化すれば,当然発熱量も変化するので,温度も変化します. 温度が変化すれば,切削力も変化し,切りくず形状も変化します. 切りくずは,その形状が幾何学的に拘束されていないので, 非常に自由度が大きいのです.
流動応力特性は,一般に弾性変形部分はヤング率の傾きであり, ある降伏応力点で弾性状態から塑性状態に移行し,それは加工硬化係数に依存 していると認識されています. 確かにそうなのでありますが,降伏応力は,ひずみ速度,温度に大きく依存し, 材料に固有な一定値ではありません. さらに,塑性状態もひずみ増分的にみれば,加工硬化係数によって, 応力が増減しますが,これもまた,ひずみ,ひずみ速度,そして温度に依存 して変化します. さらにややこしいことに,材料がどのような変形経路(過程)を受けたかによって, 上記の値は全て異なったものになります.
これより,流動応力特性は,ひずみ,ひずみ速度,温度,そしてこれらの履歴の 関数となります. 鍛造やプレスなどの解析には,このような厳密な流動応力特性を考慮しなくても, 解析できています.
考えられる理由は,鍛造やプレスなどは製品の形状がダイスやダイ,ポンチなど 工具形状による幾何学的な拘束が大きいので,切りくず形状の予測と異なり, 形状誤差が少ないこと. 対象物が大きいので,誤差が埋もれるなどだと思います. 切削の場合は,一般にわずか1.0平方mm内に, 1GPaの応力勾配,1000℃の温度勾配があります. 非常に微小な部分にこれだけの物理量の勾配があり,かつ切りくずがどのような 形状になるのかさえも分からない,などと工具にとっても解析者にとっても 過酷な状態にあるのです.
Look at me そこで,詳細な流動応力特性を得るには, 高速衝撃試験機であるホップキンソン棒型試験機を使用して実験する 必要があります.


gball 第1段階
定常切削状態を想定した場合の切削機構の解析は, 反復収束法を併用した熱弾塑性有限要素法解析を使用します. この解析手法により, 被削材と工具の材料特性,摩擦特性, 工具形状と切削条件が与えられれば,切りくず形状も切削力も切削温度も 全て詳細に把握することが可能となります. 入力条件がこれだけなので,非常に汎用的に予測することができます.


gball 第2段階
現在主流の工具は,チップブレーカ付き工具です. これは,工具すくい面に様々な凹凸がついており,この凹凸によって 切りくず処理性能(切りくず破断性能)を向上させようとしています.
第1段階で,切りくずがどのように生成されるのかを予測できていますので, この結果を用いて,今度はその切りくずが折れるのかどうかをシミュレート します. この切りくず処理性能を詳細に予測できたのは1997年までで, おそらく世界で私だけです.
切りくず処理性能は,高性能工具に必須の条件なので,高性能切削工具の 開発には,どうしても予測できなければならない要因の1つです.
解析は,時間依存的な熱弾塑性有限要素法解析を使用します. ちなみに,切りくずは脆性的に破断するのではなく,塑性変形を伴って 破断します.これは破断後の切りくず形状を見れば一目瞭然です. そこで,塑性変形も解析できる弾塑性有限要素法を使用します. 切りくず形状はもとより,切りくず内部の温度分布,材料の加工硬化状態 などは,第1段階の結果をそのまま使用します.
この解析手法により,切りくずが折れるのか,折れないのか,そして 折れる場合には,どのような形状で破断するのか,その時工具にどのような 力が作用するのかまでも予測することが可能となります.


gball 第3段階
高性能工具とは,摩耗も欠損もしない工具,と認識されます. そこで,工具摩耗や工具欠損も予測しちゃいます. 幸い当研究室の長年の研究成果により,工具摩耗も工具欠損も予測 することが可能となっています.
これは,工具すくい面上の応力と温度分布が既知なら,詳細に予測 することが可能です,というものでした. ところが,チップブレーカ工具のような複雑な工具形状の場合, 肝心な,工具すくい面上の応力も温度分布も予測できなかったので, 工具摩耗も工具欠損も予測できなかったのでした. ところが,私の第1段階の手法により,そんなものは直ぐに予測 できちゃうので,工具摩耗も工具欠損も予測できちゃいます.


gball 第4段階
ここまでで,工具性能を総合的に評価するメンツ (切削力,工具摩耗,工具欠損,切りくず処理性能,被削材の質などなど) は全て予測することが可能となりました. あとは,これらの評価因子をどのように料理し,さらには最適化するか, だけの問題となります. 幾つかの手法があります.
まずは,どうせ計算機がやるのだから,多くのパラメータを振って全データ を眺めて最適化する.( 暇な人にはお勧めです.)
適当なパラメータ組を幾つか取り上げ,ニューラルネットワーク(NN)などで 非線形補間する.
ニューラルネットワークは,結局のところブラックボックスなので, なんで,どのような理由で最適なのか,さらにはパラメータの感度が分からない からイヤだ,という貴兄には,実験計画法( 田口 Method )を使用する.
ニューラルネットワークで,非線形補間しておいて,どうでもいいから, とにかく最適化したい貴兄には,ジェネティックアルゴリズム(GA)を 使用する.
などなどです. これらは,今後の課題としておきましょう.


fig1


反復収束法による定常切削状態の解析方法


fig2

本切削機構解析では,二次元定常切削状態を想定 しています.
解析時間の短縮化のために,反復収束法を併用します. この手法は,ある有限要素モデルで,熱弾塑性有限要素法解析 を行い,得られた節点速度ベクトル(流線)と,モデルの形状が一致 するように,有限要素モデルを節点速度ベクトルに従い修正する ものです.モデル修正の時に,材料の変形履歴を流線に沿って修正 します.この履歴の修正を行うことで,単にカンチレバーを押した だけの解析と異なり,切削現象を考慮した解析になります.
約10回から20回のモデル修正ののちに,修正量が無くなり 収束したと判定されます.



切りくず破断の解析手法


fig3


工具摩耗と工具欠損の予測手法


fig4


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